142 消えた博様、貴客_2

「江渡に何しに来たの?」藤野院長は彼女に尋ねた。

白川華怜はお茶を一口飲んで答えた。「進学準備です。来年、大学受験があります。」

藤野院長は彼女を再び見つめた。「江渡大学を受験するつもりなの?先生は止めないの?」

藤野院長は彼女に非常に優れた師匠がいることを知っていたので、彼女を弟子にできるとは全く考えていなかった。ただお箏の宗家の地位を引き継いでもらえればと願っていた。

首席という称号を受け継いでもらうことを。

「あの方ですか?」白川華怜は少し考えて、御琴堂先生のことを指していると理解した。「時間がないんです。」

というのも、毎日ぶつぶつ文句を言いながら御所で演奏しなければならないから。

時には文羽天皇の後宮たちが、彼女たち専用の曲を作るよう要求してきた。

そのせいで御琴堂先生はある時期、お箏を見るのも嫌になってしまった。だから白川華怜が今、歴史書で御琴堂先生について「謙虚な君子」という描写を見ると...とても違和感を覚える。

「それに、今では先生はお箏を見ると怒り出すかもしれません。」

藤野院長:「......?」

つまり、あなたも先生と同じように反抗的なのか?

彼はお茶を一口飲み、琵琶の音が止んだ時、冷たく言った。「どうせ江渡大学には受からないよ。」

そう言うと、くしゃみをした。

藤野院長は部屋の暖房を上げるよう指示した。

二人ともお箏について独自の見解を持っていた。白川華怜は歴史上名高い御琴堂に師事し、彼女のお箏に対する理解の大部分は御琴堂から教え込まれたものだった。古来より伝わる御琴堂先生のお箏への理解は、歴史には記録されていないものだった。

話せば話すほど、藤野院長は彼女を音楽学院に引き入れたいと感じた。「陽城市にいるんだよね?」

白川華怜は頷いた。

藤野院長は少し考え込んだ。最近動画を見ていると、陽城市の観光スポットをよく目にする。この冬休みには、多くの大学生が人形劇を見に立ち寄り、春節期間中は文化的な現象になっていた。

藤野院長もその動画を見たことがあった。

白川華怜との面会を終えた後、藤野院長は彼女を送り返すことにした。

車に乗り込むと、運転手は丁重に白川華怜に行き先を尋ねた。

「博源塾です。」白川華怜は英語の読み物を開いた。

運転手が何か言う前に、藤野院長が驚いて聞き返した。「どこ?」