明後日も受付があるので、家に帰らずホテルに部屋を取った。
「お兄さん、あの子を放っておくの?」渡辺瑞恵はため息をつきながら言った。「笹美は確かにわがままだけど、安藤家のことで...大事なことを台無しにするなんて。あのチケットが彼にとってどれだけ重要か、分かってるでしょう。」
渡辺瑞恵には全く理解できなかった。他の重要な事で斉藤家と揉めるならまだしも。
それなのに安藤家のことで揉めるなんて。彼女に言わせれば、安藤家百軒分でも斉藤家一軒には及ばない。
安藤蘭は横で黙って立っていた。彼女はそのチケットのことについて詳しくは知らなかった。
しかし、それが自分の手の届かない領域だということは分かっていた。渡辺瑞恵の言葉に含みがあることに気付き、最近渡辺お婆さんが結婚式に不満を漏らしていた理由が少し分かった気がした。