渡辺文寺が車を発進させながら、木場院長の感嘆に驚愕を隠せなかった。
一瞬にして、今まで説明のつかなかったことが全て繋がった。
なぜ木場院長の切符をもらえたのか。
そして……
なぜ黄原院長が彼を加えたのか!
全ては白川華怜本人からだったのか……木場院長は彼女をそれほど重要視していたのか?
ただ空港で一人で待っている白川華怜が寂しそうに見えたから付き添っただけなのに……まさか木場院長を待っていたとは。
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午前9時過ぎ。
飛行機が平山市に着陸し、水島亜美は至れり尽くせりのサービスを受け、降機する時に安藤秀秋に小声で言った:「このフライトの予約良かったわね。人も少なくて、お父さんの腰も痛くならなかったでしょう」
安藤秀秋は水島亜美を一瞥して:「……」
彼らだけだから、当然少ないわけだ。
明らかに、水島亜美にはプライベートジェットという概念がなかった。
明石真治は早くから2台の車で待機しており、安藤宗次、木村翼、水島亜美たちが1台に、白川華怜たちがもう1台に乗った。
黒い商用車が平山市から陽城市への幹線道路に入った。
「新しい道路ができたの?」白川華怜は窓際に座り、この新しいアスファルト道路に気づいた。彼女は姿勢を正し、窓を下げた:「数ヶ月前はまだボロボロだったのに」
平山市から陽城市までは1時間ほどの道のり、50キロメートル。数ヶ月で開通したことに白川華怜は衝撃を受けた。
木村浩は彼女を一瞥した。
彼女は窓の外を見つめ、柔らかな陽光が彼女の横顔を照らし、とても静かだった。
「華怜さん、動画見ないんですよね?」空沢康利は頭を掻きながら、時々華怜さんが原始人なんじゃないかと疑問に思うことがあった。
でも、ネットをしないことを考えると理解できる。
「私たちは建設のスピードで有名なんです。以前は6時間で駅を改造し、一晩で高架橋の橋脚と橋面を交換したこともあります」空沢康利は顎を上げ、誇らしげに言った。「彼らが本気を出せば、できないことなんてないんです」
水増しする工事を除けば、これらの緊急性の高いインフラ工事は、建設のプロたちにとってはそれほど速くもない。
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陽城市に到着すると、木村浩はまず実験室へ向かった。