162 温情、探しに来る(その2)

彼はそのまま外に出た。

渡辺泉と安藤蘭は言葉を交わさなかった。安藤蘭は渡辺文寺のことに口出しできず、渡辺泉は常に渡辺文寺を束縛しないため、渡辺お婆さんは頭を悩ませていた。

斉藤家は彼女が目をつけた中で最も適した相手だった。

「華怜も今年受験ですよね?」渡辺お婆さんは白川華怜のことを持ち出し、渡辺泉を見つめながら言った。「斉藤家の話では、附属中学校への編入を手配できるそうです。」

附属中学校は行きたいからといって簡単に入れる場所ではなく、斉藤家が白川華怜を入学させるにも相当な労力が必要だった。

渡辺お婆さんがそう言うのを聞いて、安藤蘭は両手を強く握りしめ、とても興奮した様子で急いで渡辺泉の方を見た。

渡辺泉は少し考え込んで、「華怜に聞いてみます」と答えた。

白川華怜は今日授業がなく、返事はすぐに来た。渡辺泉はその返答を見ても驚かなかった。「お母さん、斉藤家には手を煩わせないでください」

「来ないの?」渡辺奥様は非常に驚いた。

しかし彼女は白川華怜が来るか来ないかにはそれほど関心がなく、それ以上追及せずに、渡辺泉を見つめながら「受験まであと僅かよ。千月のことはあなたたち二人でしっかり見てあげてね」と言った。

渡辺千月はお婆さんの希望の星で、成績は当時の渡辺文寺よりも優秀だった。

「上位3位以内は確実です」と渡辺執事がタイミングよく口を挟んだ。

「ご先祖様のご加護を」渡辺お婆さんは杖を置き、両手を合わせた。「全国で第二位を目指しましょう」

安藤蘭は附属中学校のことはよく分からなかったが、渡辺千月の話題が出ると笑顔も増えた。「もしかしたら首席になれるかもしれませんよ?」

その話題が出ると、渡辺お婆さんは安藤蘭を一瞥し、お茶を一口飲んで黙っていた。

「全国統一試験の首席はそう簡単には取れませんよ。北区の首席でも全国では50位前後です。第二位でも渡辺家では前例のない成績です。我が家の最高記録は文寺坊ちゃまの12位でした」と渡辺執事は微笑んで言った。「今年の首席は間違いなく本田家のあの方でしょう。賭けの82%が本田家に賭けられているほどです」

北区の首席がこんなに価値がないとは。

それに本田家?

賭け?

これも何なのだろう?安藤蘭は目を伏せた。また彼女の知らないことだった。

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階下。