高橋唯は送信を終えると、辛抱強く返信を待った。
お箏は江渡のこの界隈で人気が高く、藤野信勝の影響力は江渡大学の学長ほどではないものの、多くの人々の尊敬を集めており、江渡で彼に会うのは難しかった。
田中家の人でもお箏を習っていない者は会うのが難しく、田中当主も田中北実を連れて藤野院長に会ったことがあるだけだった。
藤野院長には3人の弟子がいて、他の2人は高橋唯は知らなかった。
しかしその中の1人、高橋唯はよく知っていた。江渡の才女、柳井佳穂だ。かつては江渡の天才木村錦と並び称され、興和区全体に名を馳せていた。
ただここ2年は、江渡からは目立った逸材は出ていなかった。
高橋唯は深く考えていた。彼女と木村浩の母は幼い頃から一緒に育ち、2人は深い絆で結ばれていた。
情けは人のためならずで、白川華怜の後ろ姿を見ただけで、きっと姉妹は気に入るだろうと思った。