高橋唯は送信を終えると、辛抱強く返信を待った。
お箏は江渡のこの界隈で人気が高く、藤野信勝の影響力は江渡大学の学長ほどではないものの、多くの人々の尊敬を集めており、江渡で彼に会うのは難しかった。
田中家の人でもお箏を習っていない者は会うのが難しく、田中当主も田中北実を連れて藤野院長に会ったことがあるだけだった。
藤野院長には3人の弟子がいて、他の2人は高橋唯は知らなかった。
しかしその中の1人、高橋唯はよく知っていた。江渡の才女、柳井佳穂だ。かつては江渡の天才木村錦と並び称され、興和区全体に名を馳せていた。
ただここ2年は、江渡からは目立った逸材は出ていなかった。
高橋唯は深く考えていた。彼女と木村浩の母は幼い頃から一緒に育ち、2人は深い絆で結ばれていた。
情けは人のためならずで、白川華怜の後ろ姿を見ただけで、きっと姉妹は気に入るだろうと思った。
木村浩のことには手出しできないが、白川華怜のことは何とかしっかりと手配しなければならない。
そう考えながら、また渡辺颯にメッセージを送った——
【私が彼女を養女にしたら、彼女は承諾してくれるかしら?】
高橋唯と渡辺のお父さんは娘をとても可愛がっていた。渡辺家の二番目の叔父の一族とは仲が悪かったが、高橋唯は叔父の家の娘が羨ましかった。
そう考えているうちに、藤野信勝からの返信が届いた。
高橋唯は急いで下を向いて開いた——
藤野院長:【いいでしょう。】
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白川華怜は山田との面会を終えると、図書館に行って宿題をすることにした。
木村浩は怠そうにノートパソコンを持って彼女の後を付いて行った。
図書館では宿題をする人の列がますます大きくなっていた。今日は藤野悟志の他に、頭に包帯を巻いた島田凜も加わっていた。藤野悟志は慎重に尋ねた。「大丈夫?そんな状態で宿題できる?」
島田凜は薬を一掴み飲み込んだだけだった。
何も言わなかった。
宮山小町は島田凜の隣に座り、藤野悟志を手で払いのけた。「余計なお世話よ。何見てんの?」
彼女は歯を見せた。
藤野悟志は空沢康利に宮山小町がどうしてこんなに怖くなったのかとこっそり愚痴った。
空沢康利は「うん」と言っただけで、とても冷たかった。