180 後悔先に立たず、謎の作曲家

ネットユーザーのほとんどは、物珍しさから見に来ただけで、藤野院長のことを知る人はほとんどいなかった。

しかし、コメント欄には専門家による解説があり、鮮明な対比が示されていた。

江渡音楽学院の院長がどれほどの地位なのか、芸術を学んでいない人や、この業界に関わりのない人にはわからないかもしれない。でも江渡大学の学長と比べれば、誰にでもはっきりとわかるだろう。

白鳥春姫には3S+ランクの放送待ちドラマがあり、それ以外にも今年国内の音楽界で話題となった3曲がある。

無名の編曲者が、芸能界から離れている藤野信勝のような人物だとは誰も想像できなかった。藤野信勝は巨匠と呼べる存在で、国立劇場で演奏できるアーティストだ。

多くのネットユーザーは、藤野院長の雅楽団における地位を想像できないかもしれない。

しかし、音楽学院で講義を受けた安藤仁たちは、よく理解していた。安藤仁のマネージャーは狂ったような様子で、手を震わせながら言った。「……白鳥春姫の編曲が彼の作品？最初の曲から？なぜ白鳥春姫側は一度もそれを宣伝しなかったんだ？」

これは常識では考えられないことだった。

安藤仁が江渡大学で一度講義を受けただけで、どれだけの宣伝アカウントを買収したことか。これが藤野信勝の編曲なのに、大野順子はステマや宣伝を一切しないのか？

彼も大多数のネットユーザーと同じ気持ちだった。

編曲が藤野信勝なら、誰が藤野信勝と肩を並べて作詞作曲できるのか。安藤仁のマネージャーは藤野院長のフォローを開いた。

ショート動画アプリは高齢者でも操作しやすいため、藤野院長はよく動画アプリを利用していた。これが彼の初めてのWeiboアカウントで、たった3人しかフォローしていなかった。

白鳥春姫、江渡音楽学院公式アカウント、そして安藤仁は最後のアカウントを見た——

システムのグレーのアイコンを使用している「拾」という文字のアカウント。

Weiboアカウントも明らかに新規登録したばかりで、投稿はないものの、すでに10万人のフォロワーがいた。

傍らで、安藤仁も信じられない様子で立ち上がった。「編曲は藤野院長だったのか……」

そうすれば全てが説明できた。