180 後悔先に立たず、謎の作曲家_2

社長は丁寧に「順子さん」と呼びかけた。

大野順子はその時呆然としていた。彼女は木村浩と藤野院長の計画を知らなかったが、社長のこの一言で、藤野院長がネット上で事実を明らかにしたことを悟った。

彼女は適当に応対し、向こうの社長は白鳥春姫にさらに業界の「友人」を紹介して、番組収録を手伝うと言ったが、大野順子に断られた。

「そうですか、では友よ來たれの友人たちと相談して、春姫さんに二回ほど出演してもらいましょう」社長は気にせず言った。「そうそう、編曲は藤野院長ですが、作詞作曲の先生は誰なんですか?」

彼は情報を探っていた。

放送前のドラマがどうであれ、業界人は皆、白鳥春姫は歌だけでも十分売れると知っていた。この作詞作曲のクオリティと藤野院長の編曲は、最近の音楽界で誰も太刀打ちできないものだった。