格闘が終わり、周りの人々が一斉に立ち上がって拍手を送った。
松本章文も立ち上がって拍手を送りながら、向かい側に二台のカメラを見つけた。ここでカメラを持ち込む勇気のある人がいるのか?
彼は目を細めて、もう一度見直した。
そこで、ここにいるはずのない人物を見つけた。
白鳥春姫?
なぜ彼女がここにいるんだ?
松本章文は受け入れがたかった。しかもカメラまで持っている?ここは娯楽施設なのか?
渡辺颯は松本章文の様子の変化に気づき、彼の視線の先を追って「どうしたんだ?」と尋ねた。
「白鳥春姫を見かけたような気がする」松本章文は芸能界の人間とこの場所を結びつけることができず、考え込みながら「まさかな、ここに来るのはともかく、なぜカメラマンまで連れているんだ……」
格闘場の人たちはそんなに話が通じるのか?
人混みの最後尾で。
白鳥春姫と梅田行長はまだ帰らず、吾郎が彼らを楽屋に案内して撮影することになった。
楽屋で。
伊藤満は椅子に座り、マスクを外すと、吾郎と白鳥春姫たちを見て手を振り、にやりと笑って「やあ」と声をかけた。
ディレクターは最初の衝撃から、今では麻痺していた。
彼は二人のカメラマンに必死に指示を出した。「撮れ撮れ撮れ、梅田行長と白鳥春姫たちの表情を撮れ、後ろのこれらも見えるだろう、これも撮っておけ……」
今夜の全てを見て、この回が放送されたら……
ディレクターは今や死を恐れず、むしろ番組放送後に何個のトレンド入りするか心の中で数えていた。
全く異なる、血なまぐさくもリアルで奇抜な生活、芸能界で唯一無二の番組、誰にこんなことができるだろうか?
一行は格闘場の撮影を終え、吾郎は彼らをオークション会場へ案内した。「ここは私たちの最大のオークション会場です。ただし、今日はオークションには間に合いませんでした……」
今日はオークションはないものの、数日後のオークションに向けて多くの人々が会場の準備をしていた。
ディレクターは外に出て、後ろで光る看板の文字を見た——
白虎オークション。
白虎?
ディレクターは立ち止まった。
格闘場には詳しくないが、白虎オークションについては何か覚えがあるような気がした。
しかし、ディレクターはすぐには思い出せなかった。
彼は吾郎の後ろについて黒水通りの出口へ向かった。出口は青龍バーだった。