何かあったわけではなく、ただ佐藤くんが女性に鍼灸を教わるのは冗談のように感じて来なかっただけだった。
白川華怜は頷き、それ以上は聞かなかった。彼女は佐藤俊英と話を続けた。
話題が鍼灸に及び、現代の鍼灸は昔とは違うため、白川華怜も軽々しく教えることはできなかった。
木村浩はしばらくもしないうちに、木村錦から電話がかかってきた。彼は厳しい表情で電話を切り、白川華怜に一言告げて外出した。
自分の住まいに戻った。
木村翼は安藤宗次の所に住んでおり、今はここには松本章文と渡辺颯しかいなかった。渡辺颯は昨日遅く帰ってきたため、今やっと起きたところだった。
木村浩が戻ってくるのを見て、彼は立ち上がって外を見た。「どうして君一人なの?白川ちゃんは?」
「東区の漢方薬店にいるよ」木村浩は上着を脱ぎながら、さりげなく答えた。
「漢方薬店?」渡辺颯は少し意外そうだった。白川華怜は薬を買いに行ったのか?
彼は白川華怜と漢方薬を結びつけて考えなかったが、それ以上は聞かなかった。
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昼時。
白川華怜は佐藤俊英と現代鍼灸についてだいたい探り終えてから、やっとカバンを手に取った。
佐藤俊英は最初、白川華怜に対して疑いの目を向けていたが、午前中いっぱい話をして、彼女に対してとても熱心になった。「白川さん、お昼はここで食べていかないんですか?」
もう食事時だった。
白川華怜は携帯を見下ろすと、山田文雄から送られてきた位置情報が表示されていた。首を振って、「結構です」と答えた。
陽城市の東側観光地には美食が多かった。
山田文雄が予約した店は平和通りにあり、白川華怜はしばらく歩くと小さな居酒屋に着いた。
「申し訳ありません」接客係は白川華怜を見て、少し戸惑ってから口を開いた。「本日は満席です。明日にしていただけませんでしょうか?」
「友人が中にいます」白川華怜は山田文雄から送られてきた卓番を告げた。「28番テーブルです」
古風な雰囲気の小さな居酒屋の中。
28番テーブルは1階の窓際にあり、木製の窓は木の棒で支えられ、外のゆっくりと流れる小川や前方のアーチ橋が見えた。
山田文雄はあまり外食をしない。ここは彼がネットで検索して見つけた陽城市で最も人気のある店だった。彼は青いパーカーとダークジーンズを着て、蒼白い肌で、携帯を見下ろしていた。