白川明知は長い間、白川華怜に会っていなかった。
記憶の中の白川華怜はあまりにも放蕩で、幼い頃から勉強をせず、ろくでもない友達とバーで遊び回り、車を飛ばしていた。安藤蘭が直々に書道や絵画を教えても身につかず、本を見ると居眠りをしていた。
楽器を習っても先生を怒らせて帰らせてしまうほどだった。
学校の成績は悪く、白川家の経営報告書も理解できなかった。
ほとんど取り柄がなかった。
最初、白川明知は自分と安藤蘭の頭脳から天才が生まれると思っていたが、次第に失望し、鷹山月菜が白川沙耶香と白川圭介を連れてきた。
商人は利を重んじる。
利害を考えれば、白川圭介と白川沙耶香は明らかに白川華怜より重要だった。安藤蘭さえも見捨てられるのだから、白川華怜など尚更だった。
しかし今、バーで遊び車を飛ばすだけだと思っていた白川華怜が、上原副会長と親しいとは?
上原副会長は北区でも名が通っており、次期書道協会会長で、何度も書道展を開催し、政界とのつながりもある。書道協会の上層部に入れる人物は誰一人として単純な人物ではない。
藤野信幸がその一例だ。
ただし、藤野家は上原家よりもさらに近づきがたい。
彼女のような人物がどうやって上原会長と知り合ったのだろうか?
「お嬢さんですか?」上原副会長は既に帰ろうとしていたが、白川明知の言葉を聞いて驚いて、「白川華怜さんのことですか?」
上原副会長は白川華怜が陽城市出身だと覚えていた。
江渡での審査の時、彼女は一躍注目を集め、上原副会長は特に彼女の経歴を調べた。陽城市の人間で、戸籍も陽城市にあった。
白川明知は白川華怜から視線を外し、「はい」と答えた。
「白川華怜さんは書道協会の会員です」上原副会長は白川明知を一瞥し、こう言った。「去年の書道賞で青年部門の一位を取り、江渡書道協会の若手人材も彼女には及びませんでした。今日は特に彼女を書道協会にお迎えに来たのです。」
江渡書道協会の特級会員が陽城市に加入したことで、上原副会長は白川華怜に将来性を感じていた。
彼女の才能は既に上原副会長の認めるところであり、そのような潜在能力のある人物だからこそ、上原副会長は自ら身を低くしてホテルまで迎えに来たのだ。
そう言うと、彼は白川明知に微笑んで立ち去った。