222 謎のバー、藤野院長を華怜に会わせる

木場院長は文書を開き、目を伏せて黙っていた。

しかし、黄原主任は彼の表情を見て大体察することができた。

木場院長の江渡大学と国内物理学界での地位は言うまでもなく、多くの大学が彼の講演を望んでいた。江渡大学の象徴的存在で、多くの人が彼の研究室に入ることを誇りに思っていた。

彼は机の上の資料を手に取り、静かにドアを閉めてオフィスを出た。

ドアの外では、副院長が黄原主任を待っていた。彼はオフィスの方向を一瞥して、「木場院長は機嫌がよさそうですね」と言った。

気に入った学生を見つけたのだから、機嫌が良くないはずがない。

黄原主任は微笑み、二人は総合棟の下へと向かった。

教学棟の下では数人が集まっており、二人が降りてくるのを見ると、その中の一人が黄原主任たちを見つけ、急いで数歩前に出て、特に恭しく「先生」と声をかけた。

黄原主任は振り返った。彼は物理学部の学部長としても多くの学生を指導してきた。

これは以前の研究グループのメンバー、左山国広で、才能のある学生だった。

彼は左山国広にわずかに頷いた。

黄原主任と副院長が去った後も、左山国広の周りの学生たちは依然として黄原主任の後ろ姿から目を離さなかった。

その姿が見えなくなるまで、斉藤笹美は左山国広の方を向いて、「左山博士、あれが黄原院長ですよね?」と尋ねた。

他の人々も話を聞いて、左山国広の方を見た。

普段は表彰式でしか黄原主任を見かけないが、一目で分かったのは、黄原主任のつるつるした頭頂部のおかげだった。

「ああ」左山国広は淡々と応え、「みんな早くデータを作成して私に渡してください」

左山国広が去った後も、これらの人々はまだ集まったままだった。

「木場院長はここにオフィスがあるんじゃなかったっけ?黄原主任は木場院長に会いに来たのかな?」

「かもしれないね。でも木場院長は今日なんで大学に来たんだろう?」

みんなが議論している中、斉藤笹美は携帯を見ながら、SNSに投稿した——

【今日、黄原院長にお会いできて光栄でした[画像]】

彼女は教養のある家庭の出身で、交友関係が広く、すぐに多くの人が彼女の投稿にいいねを付けた。

**

その同時刻。

北区、松木家。

松木のお父さんは階段の下に立ち、上の階を見上げて「まだ出てこないのか?」と尋ねた。