渡辺颯は再度試してみたが、開かなかった。
よかった、うまく学べなかったようだ。
「もういいや」渡辺颯は諦めて、扇子を白川華怜に返しながら、本題を切り出した。
渡辺お爺さんの誕生日という大事な件で、招待状を配り始めているところだった。
高橋唯と渡辺翔平は、渡辺颯に白川華怜を招待するよう頼んでいた。
白川華怜のあのオークションの招待状で、お爺さんの欲しがっていたものを手に入れたことで、もともと渡辺颯を高く評価していたお爺さんは、今では更に満足していた。
「月末?」白川華怜は渡辺颯と高橋唯しか知らず、渡辺家の人々とは親しくなかった。渡辺颯もただの一般家庭の出身ではないようだった。「行かないわ」
渡辺颯は金箔押しの招待状を彼女の机の上に置き、少し考えて「招待状はあなたに渡しておくから、時間があれば来てください」と言った。