食事を終えると、白川華怜は宮山小町と一緒に外出した。
隣の302号室。
木村浩もちょうど車のキーを手に取り、ゆっくりとドアを開けていた。渡辺颯が彼の後ろについていた。
高橋唯を見て、木村浩は礼儀正しく頷いて挨拶した。
高橋唯は木村浩の手にあるキーを見て、彼が白川華怜を送り出すつもりだと分かった。
全員が出て行った後、渡辺颯は首を傾げて、「どう?彼女は行くって言った?」
「いいえ」高橋唯は渡辺颯を横目で見て、「華怜は江渡にこんなに多くの友達がいるのね。あなたが役立たずなのも当然ね」
お爺さんの誕生日会には大勢の人が来るので、高橋唯は白川華怜に何人か紹介したかった。
白川華怜が来ないことに渡辺颯は驚かなかった。彼は階段を上がりながら、「友達がいなくても忙しいよ。木村錦だってまだ彼女に会えてないんだから」
高橋唯もそうだと思い、彼の後について「上階の改装は終わった?」
「まだまだ。翼が毎日家にいるから、改装する時間がないんだ」渡辺颯も白川華怜たちの迷惑になることを心配していた。
高橋唯:「302号室と301号室はどうしてそんなに早く終わったの?」
「木村さんが本気を出せば、興新に二日で移動式のリビングを302号室に作らせることだってできるさ」渡辺颯は上階の三つのマンションを見て、「お母さん、もういいでしょう」
**
同時刻、白井沙耶香も早朝から平安区へ向かっていた。
井上家は北川区にあり、平安区までは遠く、雲翔区を通り抜けて平安区まで回らなければならなかった。
運転しているのは井上家の運転手で、森中社長が助手席に座り、松木皆斗と白井沙耶香が後部座席に座っていた。
白井沙耶香は今日朝の授業を終えた後、江渡大学で白川圭介に会う予定だったので、松木皆斗が彼女に付き添っていた。
雲翔区ではここ数日警察が多く、多くの検問所が設置され、今日もまだ撤去されていなかった。
白井沙耶香は外の検問所を見て、「ここで何があったの?」
「事件があったんだ」森中社長は車窓の外を見て、感慨深げに言った。「七日間厳重な取り締まりが行われ、いくつものクラブが根こそぎ摘発された。雲翔区の何人かが失脚したとも聞くが、何が起きたのかは分からない。我々には関係のないことだ」
このような事件について、山本家の方々は当然知るはずもなく、噂話を聞くだけだった。