運転席で、雲野助手は木場院長が豪華な階段を上がっていく姿を見つめていた。
視線は確かに木場院長の手にあるノートに注がれていた。
彼は助手教授として木場院長の側で長い間働いてきた。
このノートは木場院長がいつも持ち歩いているもので、USBメモリーが何なのかは分からないが、そのノートは間違いなく木場院長の今までの研究の集大成だろう。
暗号化された数字が多く使われているが、これも明らかに機密レベルのものだ。
玄関で、マネージャーは恭しくこの老人を階上へと案内した。
振り返った瞬間、階段に赤外線が当たっているのを見たような気がした。彼は一瞬足を止め、もう一度よく見てみたが、もう何も見えなかった。
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今日の紫雲クラブは静かだった。
最上階。
木場院長が到着した時、白川華怜はちょうどろうそくを吹き消したところで、宮山小町は照明をつけた。