松本章文は本当に驚いた。「忘年の友?」
白川華怜のお箏の腕前はそんなに素晴らしいのか?
彼は思わず白川華怜と、彼女の周りにいる人々を見つめた。
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宮山小町はカメラを下ろし、安藤宗次がここに長く滞在する予定だと聞き出した。「では、今回は長期滞在されるんですか?」
「しばらくの間は滞在する予定だ」安藤宗次は手に持っていた煙管を置いた。
数人がテーブルを囲んで座った。
松本章文は渡辺颯の隣に座り、向かいには藤野院長、席には木村浩もいて、針のむしろに座っているような気分だった。一方、宮山小町や畑野景明たちは、皆彼よりもリラックスしていた。
木村浩を「木村さん」、藤野院長を「藤野お爺さん」と呼んでいる。
これを誰かに話しても、業界の人々には信じてもらえないだろう。
個室の外で、支配人がさらに二人を案内してきた。
一人は金髪で、もう一人は赤髪。
賑やかな場面だ。
宮山小町が顔を上げると、伊藤満と吾郎が目に入った。「伊藤さん、少し遅かったですね。ななは来てないんですか?」
彼女は後ろを振り返ったが、ななの姿は見えなかった。
渡辺颯はグラスを置き、真ん中の金髪を見つめた。以前清水通りの交差点で遠くから一度見かけた活発な少年だとすぐに分かった。
この人がなぜ江渡にいるのだろう?
「いやぁ、金子館長が来たんで、あの先生たちの世話をしてるんだよ」伊藤満はスリッパを履いたまま、気さくに白川華怜と安藤宗次に挨拶した。「お爺さん、姉さん」
伊藤満はいつも田中局長と食器洗いを取り合っていた。
安藤宗次は彼の印象が強く残っており、彼の目には皆賑やかな若い世代に映った。
「君も江渡で働いているのか?」安藤宗次は伊藤満に早く座るよう促した。
江渡に来てすぐにこんなに賑やかで、周りは子供たちのおしゃべりの声で溢れており、安藤宗次の口元には明らかな笑みが浮かんでいた。
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田中局長が数十年間コレクションしていたお酒を持って来た時、一行は賑やかに集まっていた。
彼は今や地位も以前とは比べものにならず、今回の帰任後、雲翔区のトップに昇進することは間違いない。
もちろん、田中局長もタイミングが良かった。雲翔区での今回の取り締まりで、上から下まで一新され、彼はこの時期に実績があり、報告書を提出して丁度トップの位置を引き継ぐことになった。