支配人は恭しく松本章文を案内してきた。
彼は先ほど階下でケーキの準備をしていたが、入るなり木村浩の灯りに照らされてぼんやりとした横顔を見て、彼の顔から緩んだ笑みが消えた。「木村坊ちゃま」
彼は木村浩に挨拶した。
木村浩は怠そうに首を傾け、とても慵懶な姿勢で、淡い瞳で松本章文を一瞥した。普段は威厳に満ちた鳳凰のような目も今日は随分と穏やかで、彼は松本章文に軽く頷いただけで、白川華怜の写真撮影を見続けた。
松本章文は体を強張らせ、余計な視線を送る勇気もなかった。
ただ渡辺颯の隣に座り、小声で尋ねた。「どうして皆、江渡にいるんですか?」
松本章文が聞いているのは宮山小町たちのことだった。
「皆、江渡に合格したんだ」渡辺颯は宮山小町から聞いていた。彼女はメディア大学に合格したのだ。
「どうしてみんな勉強がそんなに良いの?」松本章文は驚いた。
渡辺家は最近、当主の誕生祝いで忙しく、その前は提携案件で忙しかったため、松本章文はゆっくり休む暇もなかった。今日は白川華怜の誕生日で、彼は企画を手伝っていた。
二人が話している最中。
隣の木村浩は携帯を見下ろし、安藤秀秋が到着したと伝えてきた。
彼は携帯の画面を消し、ドアを開けて出て行った。
渡辺颯も立ち上がり、小声で言った。「華怜ちゃんのお爺さんが来たみたいだ」
木村浩が出て行くと、松本章文はほっと息をついた。彼も立ち上がり、個室のドアを見つめた。「白川さんのお爺さんですか」
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しばらくして、個室のドアが再び開いた。
一行が外から入ってきた。
先頭を歩いていたのは二人の老人で、一人は手を後ろに組み、もう一人は煙管を手に持ち、二人は会話を交わしていた。
後ろには落ち着いた様子の安藤秀秋と、あまり周りを見る勇気のない水島亜美が続いていた。
木村浩は支配人と何か話をしながら頭を下げていた。
渡辺颯は安藤宗次を見て、そして安藤宗次と親しく話す藤野院長を見て、しばらく状況を理解できなかった。
藤野院長のことは知っていた。
母親が田中当主から何とか紹介してもらったが、結局白川華怜本人が知り合いだった。
雅楽団の代表的人物だ。
だから彼の隣にいるのが白川華怜のお爺さんなのだろう?
なぜ彼女のお爺さんは藤野院長とこんなに親しそうなのか?