江渡大学の正門前。
安藤秀秋は大野助手の車に乗ったことがあり、ナンバープレートを覚えていた。明石真治の方を向いて「明石くん、迎えが来たから、送らなくていいよ」と言った。
明石真治は頷き、その場を離れずにサングラス越しに大野助手の車のナンバープレートを見つめていた。
大野助手は運転席から降りてきた。
彼は反対側に歩き、安藤秀秋たちの一行を見た。
安藤秀秋と水島亜美には会ったことがあったが、彼の視線は水島亜美の隣にいる女性に注がれた。
夏の太陽は遅くまで沈まず、今は光が柔らかく、太陽全体が優しい霧に包まれているようだった。涼しげな金色の光が斜めに彼女に当たり、エメラルドグリーンのドレスが風に揺れていた。
眉目は物憂げで奔放だった。
この青春真っ盛りの年齢にふさわしい気概を持ちながら、この年齢では珍しい天下を論じるような余裕も備えていた。
まるで大将のような風格だった。
大野助手はその場に立ち尽くし、白川華怜を見て言葉を失いそうになった。
「大野助手」安藤秀秋が近づき、安藤宗次を紹介した。「こちらが父です」
大野助手はようやく我に返り、白川華怜から視線を外して安藤宗次に挨拶した。「お爺様、はじめまして。望月社長の秘書の大野と申します。大野とお呼びください」
彼は安藤宗次を見て、この安藤さんもまた非凡な風格を持っていることに驚いた。
大野助手は車のドアを開け、安藤家の一行を乗せた。
彼は運転席に座り、車を大通りに出した。今日は平日ではないので、道は混んでいなかった。彼はバックミラーを見た。
白川華怜はドア側の席に座り、乗車後すぐにBluetoothイヤホンを付け、窓を下げて肘を窓枠に乗せていた。
「白川さんは江渡大学のどの学部ですか?」大野助手は丁寧に尋ねた。
水島亜美は今日撮った写真を見ながら、代わりに答えた。「華怜は物理学科よ」
江渡大学物理学科、三大王牌学科の一つだ。
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車はすぐに晴明楼に到着した。
望月綾瀬は既に数分早く到着し、安藤宗次を待っていた。
大野助手が晴明楼の入り口に車を停めると、助手席に座っていた安藤宗次を見た望月綾瀬が、まず助手席のドアを開けた。「大伯父様、私は綾瀬です」
安藤宗次は車を降り、感慨深げな表情で言った。「みんな大きくなったね」