第247話 一等賞、慣れるだけ

望月家、望月哲光の屋敷。

朝の八時、珠のカーテン越しに檀香の香りが漂ってきた。

望月綾瀬が来た時、使用人が手つかずの食事を運び出していた。望月綾瀬を見ると、使用人は横に避け、軽く腰を曲げた。

望月綾瀬は手で珠のカーテンを開けて中に入った。中は薄暗く、煙がゆらゆらと立ち上っていた。

広間を通り抜け、彼女は隣の小部屋に入った。

小部屋には窓がなく、ただ一つの黄色い灯りだけがあった。

中で、灰色の法衣を着た望月哲光が仏像の前で背を向けて正座し、低い声で唱えていた。「三十二相・八十種好、悉く具足し……無量の衆生をして、皆発心せしめ……」

望月綾瀬は封筒を持ったまま、静かに彼の右後方で正座し、合掌して仏像を見つめた。

望月哲光がその一節を読み終えると、彼はゆっくりと目の前の経典の紙をめくった。