第247話 一等賞、慣れるだけ

望月家、望月哲光の屋敷。

朝の八時、珠のカーテン越しに檀香の香りが漂ってきた。

望月綾瀬が来た時、使用人が手つかずの食事を運び出していた。望月綾瀬を見ると、使用人は横に避け、軽く腰を曲げた。

望月綾瀬は手で珠のカーテンを開けて中に入った。中は薄暗く、煙がゆらゆらと立ち上っていた。

広間を通り抜け、彼女は隣の小部屋に入った。

小部屋には窓がなく、ただ一つの黄色い灯りだけがあった。

中で、灰色の法衣を着た望月哲光が仏像の前で背を向けて正座し、低い声で唱えていた。「三十二相・八十種好、悉く具足し……無量の衆生をして、皆発心せしめ……」

望月綾瀬は封筒を持ったまま、静かに彼の右後方で正座し、合掌して仏像を見つめた。

望月哲光がその一節を読み終えると、彼はゆっくりと目の前の経典の紙をめくった。

彼が止まると、望月綾瀬はようやく口を開いた。「お父さん、先日、伯父さんの外孫女に会いました。白川華怜という子で、とても可愛らしい子でした。」

望月哲光は数珠を回しながら、低く渋い声で言った。「彼らは江渡に戻ったのか?倉庫から贈り物を選んで渡してやりなさい。」

「江渡大学物理学科の今年の新入生です。」望月綾瀬は前の背中を見つめた。

望月哲光の数珠を回す動きは途切れることなく、ただ頷いただけだった。

「北区の出身で、陽城市で受験して」望月綾瀬は手の中の写真を見下ろし、「でも今年は本田家の人を超えて、センター試験で首席になりました。」

「本田」という姓を聞くと、ほとんどの人が知能の最高峰を思い浮かべる。

なにしろ天下の師、本田徳厚がいるのだから。

望月哲光の手が一瞬止まり、濁った目で目の前の経典を見つめながら、声に少し揺らぎが生じた。「センター試験首席か……」

「お父さん」望月綾瀬は封筒を握りしめ、「外に出てきてください。星美も、私たちみんなが待っています。」

望月哲光はかつて家族全体を率いる人物だったが、望月家がこの災難に遭ってから、彼の魂も一緒に持っていかれたかのようだった。

「私が?」望月哲光は自嘲的に声を出し、目を閉じて木魚を一打一打叩きながら言った。「綾瀬、私はもう無用の人間だ。家族に何の利益をもたらせるというのか。若い人たちを、私の手で全て台無しにするわけにはいかない。」