彼女は白川華怜を連れて着替えに行き、外には木村浩と藤野院長だけが残された。
二人には特に話すことはなかった。
木村坊ちゃまは控えめにしているものの、その威厳は依然として強く、藤野院長は隣の間宮さんと話をしていた。
着替えにはそれほど時間はかからなかったが、宮山小町が白川華怜に簡単なメイクを施すため、二人が出てくるまでに20分ほどかかった。
物音がしたとき、文竹に寄りかかっていた木村浩はようやく顔を上げた。
白川華怜が先に出てきて、花柄の暖簾をくぐった。彼女の髪は長く、一本の簪では束ねきれず、両側から髪を少しずつ取って後ろで結んでいた。
暖簾をくぐった瞬間、後ろの髪が胸の前に垂れ落ちた。
深紅の戦国時代の衣装が床まで優雅に広がっていた。
宮山小町は半月かけてこの場所を決めた。光の具合は本当に絶妙で、過度に眩しい光もなく、わざとらしい照明もなく、自然な古風な雰囲気があった。
木村浩は静かに入口に立って見つめていた。
藤野院長も隣の間宮さんも、話していた内容を一瞬忘れてしまうほど、彼らは白川華怜を見つめていた。
まるで千年前の貴族の娘が暖簾をくぐって部屋から何気なく出てきたかのようで、光が竹林の隙間から、塵を通して差し込んでいた。
光が点々と彼女の顔に当たり、肌は透き通るように白く、長い睫毛は下向きで、眉目は絵画のように美しく、耳元には虫の音と風の音が聞こえ、時折竹林の外から通行人の笑い声が聞こえた。
すべてが調和して静かだった。
スポーツウェア姿の宮山小町が白川華怜の後に続いて出てきて、皆を絵巻物の世界から現実に引き戻した。
「華怜さん」宮山小町は部屋の中で一度過ごしていたが、今でも白川華怜の顔を見つめながら、「この石のテーブルの前に座ってください。気をつけて、スカートが少し長いので……」
宮山小町は白川華怜が階段を降りるのを見て注意を促した。
戦国時代の衣装はとても長く、床まで届き、現代人が着ると裾を踏んでしまいやすい。
彼女がそう言った直後、白川華怜は階段を降り、まるで平地を歩くかのように自然に動き、裾にも皺一つできなかった。宮山小町はネットユーザーの不満をずっと聞いていた。今年の時代劇は『大永』以外、本当の品格を持った作品は少ないと。
今、白川華怜を見て、やっと品格とは何かを理解した。