空沢康利は伊田晴彦を見つめ、しばらく考えていた。
そして深刻そうに首を振った。
「いや、違うんだ。彼女は最近長距離走をしていて、夜には長槍の練習もしているんだ」と空沢康利は伊田晴彦に説明した。
長距離走については理解できたが、空沢康利の話の流れについていけなかった伊田晴彦は「長槍?」と聞き返した。
彼は一瞬、長槍と光量子もつれがどんな関係にあるのか理解できなかった。
「ああ、そうだ」最近金融学部が学部の演目を大々的に宣伝していることもあり、空沢康利は機会を見計らって伊田晴彦に勧めた。「9月30日の物理学部と金融学部の合同新入生歓迎会、見に来てね」
渡辺千月が顔を上げ、小さな声で「9月30日?」と言った。
本田直哉は彼女を見下ろして「……」
なぜいつも重要なポイントを見逃すのか?