空沢康利は伊田晴彦を見つめ、しばらく考えていた。
そして深刻そうに首を振った。
「いや、違うんだ。彼女は最近長距離走をしていて、夜には長槍の練習もしているんだ」と空沢康利は伊田晴彦に説明した。
長距離走については理解できたが、空沢康利の話の流れについていけなかった伊田晴彦は「長槍?」と聞き返した。
彼は一瞬、長槍と光量子もつれがどんな関係にあるのか理解できなかった。
「ああ、そうだ」最近金融学部が学部の演目を大々的に宣伝していることもあり、空沢康利は機会を見計らって伊田晴彦に勧めた。「9月30日の物理学部と金融学部の合同新入生歓迎会、見に来てね」
渡辺千月が顔を上げ、小さな声で「9月30日?」と言った。
本田直哉は彼女を見下ろして「……」
なぜいつも重要なポイントを見逃すのか?
白川華怜が席に戻ったとき、空沢康利はまだ伊田晴彦に勧誘を続けていた。
伊田晴彦のグループのメンバーは皆興奮していて、白川華怜を見ながら何か言いたそうにしていた。
彼女の空間二光子状態振幅についての講演があまりにも素晴らしかった。
このグループのメンバーは最前列の教授たちに挨拶する余裕もなく、白川華怜を取り囲んでいた。
「姉さん、これからは私の姉です!」伊田晴彦はそう言いながら、右側に一人で座っている大野純也に視線を向けた。
このグループの中で誰が高橋隼のグループと親しいかは、考えるまでもなかった。
「かっこよすぎです」近藤希美と吉田実里がようやく人混みを抜けて来て、白川華怜に言った後、慎重に本田直哉や伊田晴彦たちに挨拶をした。
この人たちと一緒にいると、確かにプレッシャーは大きかった。
後ろでは、学校新聞部のメンバーもようやく反応し、カメラを担いで白川華怜のインタビューに向かった。
「やっぱり、彼女は前のグループに負けるはずがない」群衆の中で、大野旭は興奮気味に言った。「松木君、白川さんたちのところに行くけど、二人も来る?」
彼らは皆博源塾で過ごしたことがあり、お互いによく知っていた。
大野旭が声を上げると、松木皆斗は我に返り、「君たちで行って」と言った。
大野旭と藤田道夫も気にせず、前に行って白川華怜と空沢康利たちを探した。
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