264本物の初恋、白川華怜もお箏を弾く

これは視覚と聴覚の饗宴だった。

藤野信勝と江渡音楽大学の先生方による専門的な編曲。

緩急自在で剛柔併せ持つ槍さばき、派手な見せ場もなく、ワイヤーも使っていない。

最後の誰も真似できない裏返しの槍、その場の圧倒的な迫力を感じてこそ、これこそが白川軍の奥義、裏返しの槍だと分かる——

無双の技!

終演、幕引き。

白川華怜が楽屋に戻ると、幕の後ろで待機していた二人の司会者が出てこなかった。二人は幕際に立ち止まり、台本を手に動かずに彼女を見つめていた。

楽屋はそれほど広くなく、白川華怜は右手で軽々と槍を持ち、内から外へと気品を漂わせながら、二人の司会者に軽く頷いて、「そろそろ出番ですよね?」と声をかけた。

「あ、」女性司会者は呆然とした表情からようやく我に返り、銀色のドレスを整えながら、「そうそう、私たちの番ね。」

彼女は男性司会者を引っ張って、幕を通り抜けて前に進んだ。

楽屋から幕越しに見える人は少なかったが、外からの轟々たる拍手と歓声は皆に聞こえていた。

青葉紗矢は心配で仕方なく、幕の端を開けて最後まで見ていた。

興奮で顔を赤らめ、今、白川華怜が片手で長槍を持って楽屋に戻ってくる姿を見て、その迫力に一瞬恍惚とした。

「先輩。」白川華怜は片手で長槍を壁に立てかけ、彼女に挨拶をしてから、休憩室に着替えに行った。

この衣装は外出着としても問題ないが、九月末とはいえ江渡は異常に暑かった。

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外の最前列で、司会者が壇上で話し始めた。

黄原院長と隣の教授はようやく我に返った。彼らはステージに最も近い位置にいたため、誰よりもその圧倒的な迫力を肌で感じていた。

「この槍さばき、」木村浩の右隣で、藤井院長は一時的に隣の木村坊ちゃまの存在を忘れ、顔を向けて親しい金融学部の教授に話しかけた。「夏休みの白鳥春姫という子よりも上手いな。」

「ええ、それに、」金融学部の教授は鼻梁の眼鏡を押し上げながら、小声で自分の意見を述べた。「彼女が先ほど槍を背負った時の姿、私たちの……大姉さまに似ていませんでしたか?」

「そうだ、」自分の感覚を教授に言い当てられ、藤井院長は即座に頷いた。「彼女は誰なんだ?」

これは彼だけでなく、会場にいる全員の第一印象だった。

大姉さまとは、江渡大学の全学生が本田徳厚の女弟子を呼ぶ呼び方だった。