白川華怜は昨日、木場院長の研究室にいた。
今日は外出しなかった。
朝のジョギングを終えてシャワーを浴び、着替えを済ませた。木村浩が彼女を訪ねてきた時、彼女は机の前に立って書道をしていた。
書斎には筆、墨、紙、硯が揃っていた。
彼女はシンプルな藍色の上着に白いロングスカートを着て、黒髪を白玉かんざしで結い上げ、長いまつげを伏せていた。この伝統的な色使いは、彼女の上品さを引き立てていた。
彼女が真剣に書道をする時は、館閣体ではなかった。
梁体字だった。
筆と墨が横に広がっていく。
木村浩は彼女の書いている内容を見下ろした。ただ一文—
知行合一。
江渡大学の校訓だった。
現在、書道協会では梁体字について多くの解説があり、虚実や入木三分を重視している。
彼女の書は常に自由だが、その中に気骨が見えた。
「いつ行くの?」木村浩は白いシャツを着て、のんびりとした様子で彼女の横に立ち、彼女の書を鑑賞していた。朝の光の中で、その輪郭は極めて流麗だった。
白川華怜は筆を置いて、「早めに。見終わったら食事はせずに、木場院長のところへ行かないと」と答えた。
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安藤蘭は子供を産み、渡辺家一同は喜んでいた。
渡辺泉はこの半年、雲翔区で名を上げ、特にここ2ヶ月は田中局長がいることで、さらに地位が上がり、渡辺家の本家からも人を派遣して祝いに来ていた。
急激な出世に、渡辺泉自身も不安を感じていたため、今回は大きな宴会は開かず、親しい親戚と取引先だけを招待した。
場所は渡辺家だった。
白川華怜と安藤宗次たちは比較的早く到着した。彼らが着いた時には、田中局長はすでに来ていた。彼は渡辺泉とも親しく、白川華怜と木村浩も来ることを知っていたので、わずか3日の休暇をここに充てていた。
安藤蘭は2階で休養中で、下りてこなかった。
赤ちゃんを抱いていたのは渡辺お婆さんで、白川華怜と安藤宗次が来るのを見て、彼女の顔は菊の花のように笑みでいっぱいになった。
生後1ヶ月の赤ちゃんは、早産だったものの、今では少し肉付きがよくなり、白くてふっくらしていた。
安藤宗次はいつものように煙管を持ち、何も言わずに赤ちゃんを見つめ、表情が和らいだ。