「個室にしましょうか?」
鏑木執事は安藤宗次を見つめ、少し躊躇していた。安藤宗次は年長者なので、子供たちと同じテーブルに座らせるのは失礼かもしれないと思ったからだ。
「構わない」安藤宗次はこういったことにこだわらない人だった。白川華怜たちがいなければ、江渡には戻ってこなかっただろう。鏑木執事の躊躇いを察し、タバコを一服吸って言った。「そのままで良い」
「お嬢様と相談してまいります」
庭の門の外では、ランスと木村翼がパラソルの下で、新しく蒔いた種を見ていた。
外の風が少し冷たくなってきたので、彼は木村翼に上着を着るよう声をかけた。
「それと望月さんの件ですが」鏑木執事はふと思い出して言った。「来週の水曜日に戸籍の移動の予約が入っています」
安藤蘭の戸籍の件は紆余曲折があった。