275ただならぬ客(その2)

この時、望月綾芽のことさえ気にかける余裕がなかった。

望月綾芽は望月家の事にほとんど関心を持たなかったが、初めて「白川さん」という名前を聞いた時、ちらりと視線を送ると、すぐに誰かが説明してくれた。

白川華怜については望月家にはあまり情報がなく、他人が彼女の情報を調べることは難しかった。

「鏑木執事はあまり話さないけれど……才能は相当なものらしく、今は江渡大学にいるそうだ」当主は笑みを浮かべながら言った。

才能の話が出ると、高橋執事は当主を横目で見た。

当主も笑いながら感慨深げに言った。「私としたことが、高橋博士の前で才能なんて言葉を出すなんて」

どんなに優れた才能でも、望月綾芽の息子である高橋には及ばないのだから。

望月綾芽はゆっくりと茶葉を払いのけ、否定はしなかった。