279 強強合作、マスターレベルの編曲(その2)

階段の入り口で島田凜に電話をかけた。

「華怜さん」電話から島田凜の冷静で堅苦しい声が聞こえた。

「おじいちゃんから渡すものがあるの。実験棟に来たわ」白川華怜が言った。

島田凜の声はいつも通り、感情の起伏もなく簡潔に答えた。「三階の一番奥の実験室よ」

白川華怜は電話を切り、階段の入り口でさらに2分待ってから実験室へ向かった。

実験室のドアは閉まっていた。彼女が到着したとき、島田凜は片手に記録レポート、もう片手に黒ペンを持ち、相変わらず黒縁メガネをかけ、肌は雪のように白かった。

前髪とメガネが彼女の澄んだ瞳を隠していた。

「実験スケジュールを書いているところ」島田凜はペンとレポートを机に置き、黒縁メガネを押し上げた。

「うん」白川華怜のダウンジャケットのジッパーは既に開いていた。彼女は片手にマントを持ち、もう片手で服を隣の椅子に置きながら、ゆっくりと言った。「おじいちゃんが作ってくれた冬着よ」