黒水通りから送られてきた取引記録には、上原賢太の名前が記載されていた。十数年前の帳簿は既に計算できないが、上原賢太は買い手との取引が頻繁だったため、当時の買い手に上原賢太がいたことをはっきりと覚えていた。
「上原賢太?」田中局長はしばらく考えてから、やっとその人物を思い出した。
かつて渡辺泉を脳死寸前まで追い込んだ上原賢太、中村修の秘書だ。
「上原賢太の記録は陽城市分署にある」田中局長は陽城市から江渡に直接昇進した人物で、陽城市の多くの人々が彼の恩義を覚えている。「今夜、記録をスキャンして送ってもらうように頼んで、時間を見つけて小山晶子に雲翔分署のシステムを直接見せてもらおう」
陽城市の内部資料は、むやみに送付するわけにはいかない。
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高橋家の書斎にて。
高橋裕也は望月綾芽と話をしていた。「まだ会っていないのか?」