第13章 恐ろしい男
島田書雅は顔を赤らめ、困惑した表情で山田流真の方を見つめた。
山田流真は急いで言った。「島田さんは我が社の営業部の責任者で、GGKとの協力案件を全面的に担当するのに最適な人材です。」
秋山瑛真は物憂げに言った。「では、あなたの言うその責任者は、これまでどのような実績を上げてきたのですか？あるいは、大規模なプロジェクトを担当したことがあるのか、それとも他に目覚ましい実績でもあるのですか？」
山田流真は言葉を失った。実際、島田書雅には何もなかった。
ただ海外で営業とは全く関係のない学位を取っただけだった。
「秋山様、私、頑張ります。」島田書雅は哀れっぽい表情を浮かべ、目尻には涙の光が宿っていた。
彼女は自分のこの姿が男性の保護本能を刺激しやすいことを知っていた。
しかし秋山瑛真は島田書雅を見ようともせず、山田流真に向かって言った。「私が御社への投資を決めたのは、仁藤心春の開発能力と営業力を評価したからだ。彼女がいなくなった今、御社に同じ価値があるとは思えないだろう。」
山田流真の表情は一気に険しくなり、島田書雅も驚きの表情を浮かべた。
まさか、GGKが山田流真の会社に目をつけたのは、仁藤心春のためだったなんて！
「仁藤心春が会社を去った以上、我々の間にはもう話し合うことはないでしょう。お引き取りください。」秋山瑛真は立ち上がり、その場を去ろうとした。
しかし山田流真は、相手をそのまま帰すわけにはいかなかった。
「秋山様、もう少しお話しさせていただけませんか...」彼は手を伸ばして秋山瑛真を引き止めようとした。
しかし次の瞬間、山田流真の口から悲痛な叫び声が上がった。
古川山がすでに山田流真の右手を掴み、秋山瑛真に触れる前に引き離していたのだ。
「や、やめて...離して！」傍らの島田書雅は驚いて叫んだ。
しかし古川山は手を離さず、むしろ秋山瑛真の方を見つめた。
山田流真は痛みで顔面蒼白となり、額から大粒の汗が流れ落ち、気を失いそうになっていた。
「私はね、礼儀を知らない人間が一番嫌いなんだ。」秋山瑛真は淡々と言った。
「私は...ただ秋山様と...もう少しお話ししたかっただけで...悪意はありません...」山田流真は慌てて言った。
「今回は見逃してやるが、教訓は必要だろう。指一本を潰しておけ。」秋山瑛真は何でもないことのように言った。
島田書雅が反応する間もなく、「バキッ」という骨の折れる音が響き、続いて山田流真の悲鳴が上がった。彼は地面に崩れ落ち、右手を強く押さえていた。
彼の右手の人差し指が折られていた。
島田書雅は息を飲み、信じられない様子で秋山瑛真を見つめた。「どうしてこんなことを？」
「なぜいけないのかな？」秋山瑛真は無表情で問い返した。
その瞬間、島田書雅の全身が震え始めた。目の前の男性が彼女を見る目は、まるで無生物を見るかのようだった。
まるで彼女が彼の目には、命のない物体のように映っているかのように。
だからこそ、彼は少しの罪悪感もなくそのような言葉を口にできたのだ。
個室に島田書雅と山田流真だけが残された時も、島田書雅の体は震えが止まらなかった。
この男は...恐ろしすぎる！
———
仁藤心春がアパートに戻った時、温井卿介はまだ帰っていなかった。彼女は浴室に入り、鏡を見た。
左頬が赤く腫れ上がり、かなり恐ろしい様相を呈していた。
ファンデーションで隠そうとしても、すぐには隠せそうにない。冷やして、腫れ止めの軟膏を塗るしかなさそうだった。
そう考えていた時、突然耳元で声が聞こえた。「その顔はどうしたんだ？」
彼女は驚いて振り向くと、浴室の入り口に立つ温井卿介の姿があった。
「お帰りなさい。」彼女は言った。
彼は眉をひそめ、浴室に入ってきて、彼女の顎を掴んだ。「何があった？」
「大したことじゃないわ。」彼女は軽く言った。
「大したことじゃない？」彼は中指で彼女の腫れた頬を撫で、彼女は思わず痛みで声を上げた。
「誰に殴られた？」温井卿介の声はさらに冷たくなった。「また悠仁の叔母か？」
「違います！」仁藤心春は素早く否定した。「坂下倩乃よ。大学の同級生で、前にショッピングモールで会ったでしょう。」
「そのまま殴られたのか？」彼は尋ねた。
「もちろん違うわ。私も殴り返したわ。」だから互いに報復し合って、お互い様よ。「安心して、私も軽くは殴ってないから、彼女の顔の状態も私より良くはないはずよ。」
温井卿介は睫毛を下げた。「殴り返すことを知っているなら、なぜ田中悠仁の叔母に殴られた時は反撃しなかった？」
仁藤心春の目に苦い色が浮かんだ。それは田中家の人だから。今は悠仁を育てている叔母だから。
たとえ殴られても、侮辱されても、さらにひどいことをされても、耐えるしかない。
悠仁に対する借りは、死ぬまでも返せないだろう。
空気は沈黙に包まれた。
突然、温井卿介が頭を下げ、舌先で仁藤心春の頬を舐めた。仁藤心春は身を震わせ、反射的に後ろに下がろうとした。
しかし温井卿介はすでに片手で彼女の腰を掴み、もう片方の手で彼女の顎を押さえ、少しも動けないようにしていた！
「卿介、あなた...」
彼は彼女の傷ついた頬にキスをし、頬の痛みを刺激した。
「痛い！」彼女は思わず叫んだ。
「痛いなら、しっかり教訓を覚えておけ。これからは人に殴られるな。殴り返せると思っても駄目だ。言っただろう、お姉さんの顔に他人の傷跡があるのは好きじゃない。傷をつけるなら、俺がつけるべきだ！」彼は低い声で言った。
「でも...」仁藤心春が何か言おうとしたが、温井卿介の唇はすでに彼女の頬から唇の端、顎へと移っていた...
「お姉さんは、わかったと言うだけでいい。」
彼女は彼にキスされた場所が燃えるように熱くなるのを感じた。「卿介、やめて...」
しかし彼は聞こえないふりをして、唇を下へと移動させ、彼女の首筋、鎖骨にキスを続けた...一つ一つのキスは痛みを伴い、彼女の体にキスマークを残していった。
「わかった？」その冷たい声と熱いキスは、まるで鮮やかな対比を成していた。
彼女の頭はほとんど真っ白になりそうだった。彼女が「わ...わかりました...」と叫ぶまで、彼はようやく動きを止め、彼女に向かって微笑んだ。
「お姉さんがわかってくれたなら良かった。じゃあ、薬を塗ってあげよう。」
————
坂下倩乃は仁藤心春に平手打ちされ、そのまま引き下がるわけにはいかなかった。
仁藤心春に大恥をかかされた、必ず仕返しをしてやる！
しかし、父親に泣きつく前に、父親が夜怒り狂って彼女を怒鳴りつけるとは思いもよらなかった。「お前は外で一体何をしたんだ。どうして温井二若様の逆鱗に触れたんだ？」
坂下倩乃は驚いた。「私...私は温井二若様なんて知りもしません。」
「じゃあなぜ、うちの工場と長年取引のある会社から突然電話があって、全ての取引を中止すると言われたんだ？しかも、お前が温井二若様の逆鱗に触れたからだと！」坂下お父さんは激しく問いただした。
坂下倩乃は完全に頭が混乱していた。温井二若様については、噂は聞いたことがあった。
しかし彼女の交友範囲で、どうやって温井二若様と知り合えるというのか。まして逆鱗に触れるなんて！
「私、私にはわかりません。本当に温井二若様なんて知りもしないんです！」坂下倩乃は焦った。
「お前が普段から外で傲慢な態度を取っているのは知っているんだ。きっと気づかないうちに人を怒らせたんだろう！」坂下お父さんは言った。「とにかく、何としても二若様の許しを得なければならない。この件が解決できなければ、我が家は終わりだ！」
坂下倩乃は不安そうに唇を噛んだ。あの温井二若様に許しを請う？塩浜市で有名な狂人に？！