第21章 許しを請う

でも……もし適合検査をするなら、悠仁どころか、田中家の人々も同意しないでしょう!

田中家の人々は彼女が悠仁とこれ以上関わらないことを願っているはずです。

医師は薬を処方しましたが、彼女にとってはただの痛み止めと延命のためだけでした。

彼女は分かっていました。これらの薬はあまり効果がなく、適合するドナーが見つからなければ、せいぜい一年しか生きられないということを。

病院を出て、仁藤心春は山田流真の会社へ向かって車を走らせました。彼女の研究ノートは、まだ山田流真が返してくれていませんでした。

しかし会社に着くと、思いがけず小宮尚水を見かけました。

「小宮様、仁藤部長はすでに会社を退職しており、今はおりません」と受付担当者は困った表情で説明していました。

この小宮様は朝早くから仁藤部長に会うと言って譲らないのですが、仁藤部長はすでに退職しており、山田会長は契約の話で外出中なのです。

しかも、この小宮様は得意先として無下にできない人物です。

受付担当者は今にも泣き出しそうでした!

そのとき、受付担当者は会社の入り口に立つ人影に気づき、目を輝かせました。

「仁藤...仁藤部長!」受付担当者は救世主が現れたかのような表情を浮かべました。

小宮尚水も仁藤心春を見つけ、突然矢のように前に出て、興奮して仁藤心春の腕を掴みました。「仁藤さん、以前は私が悪かった。どうか許してください。いくらでも賠償いたします!」

仁藤心春は不思議そうに小宮尚水を見つめました。今の小宮尚水は外出着を着ていましたが、首に巻かれた白い包帯から見て、体にも包帯を巻いているようでした。

さらに脇の下には杖をついており、まだ動くのが困難な様子でした。

彼の怪我は、きっと卿介がつけたものでしょう!

卿介は詳しく話してはいませんでしたが、彼女の記憶には多少の断片が残っていました。

小宮尚水は彼女よりもずっと重傷を負っており、しかも相手は善人とは言えず、むしろ小人物と言えるような人物です。

それなのに今、突然謝罪に来て、賠償まで申し出るなんて?!

「必要ありません!」仁藤心春は小宮尚水の手を振り払いました。