第22章 予期せぬ賠償請求

言葉を口にした瞬間、山田流真は後悔した。

温井卿介は、このことを誰にも話してはいけないと言っていたのだ。

もし温井卿介の本当の身分を他人に話してしまったら...そう考えると、山田流真は背筋に冷や汗が流れるのを感じた。

「彼女の後ろには誰かいるの?」島田書雅が尋ねた。

山田流真は心虚ろに言った。「僕も推測でしかないけど...さっきの小宮若様の仁藤心春への態度を見ただろう?彼女の後ろに誰もいないなんてことがあり得るかい?」

「でも...」島田書雅はまだ何か違和感を感じていた。

「とにかく、これからは仁藤心春に会ったら、丁寧に接するように。彼女を怒らせないようにね」山田流真は注意を促した。

島田書雅は目を伏せ、心の中の不満を押し殺して「分かったわ。そういえば、さっき仁藤心春が言及した研究ノートって何?」

「彼女が会社に残していった一冊のノートだよ。まだ公表されていない研究方法が書かれているんだけど、それは彼女個人のものであって、会社のものじゃない」山田流真は説明した。

島田書雅の心が動いた。

山田流真は島田書雅の腫れた頬に手を当てた。「GGKとの提携は、もう一度交渉してみるよ。仁藤心春がいなくたって、うまくいかないはずがないさ!」

島田書雅は赤い唇を開いて言った。「そうね、この世に仁藤心春でなければできないことなんて、何もないわ」

私、島田書雅は仁藤心春以上にできるはず!

————

仁藤心春がアパートに戻ると、意外にも温井卿介がいた。

彼はソファに座り、何気なくアルバムをめくっていた。

午後の陽光が窓から差し込み、彼の体に降り注いでいて、優雅で美しい絵画のような光景だった。

「お帰り」彼女が入ってきた気配を感じて、温井卿介は顔を上げた。

「うん」仁藤心春は頷いた。「アルバムを見てるの?」

「君の部屋に入った時に偶然見つけたんだ。見て悪かったかな」彼は言った。

「見ていいわ」彼女は前に進み出た。

このアルバムは古いもので、家族の写真が収められていた。

母と継父、悠仁、温井おじさんと卿介、そして...

「このアルバムの他の人たちは誰なのか分かるけど、この二人は...」温井卿介は質問しながら、アルバムのある写真を指さした。

仁藤心春もその写真に目を向けた。