しばらく手間取った末、仁藤心春はようやく田中悠仁と温井卿介を連れてホテルの玄関を出た。
心春は悠仁を見つめながら言った。「もし本当にモデルや俳優の道に進みたいのなら、お姉さんは応援するわ。でも、ただお金が早く稼げるからという理由でやりたいのなら、お金のために無理して仕事をする必要はないわ。まだ若いんだから、自分が本当に何をしたいのかよく考えてから決めればいい。お金が必要なら、私に言って。小遣いをあげられるから」
「お金持ちなの?」悠仁が突然尋ねた。
「そんなにお金持ちというわけじゃないけど、小遣いくらいなら問題ないわ」と心春は答えた。
悠仁は心春を横目で見ながら、「おばさんから聞いたけど、前の彼氏に振られたんでしょ?今は金で適当な男を囲ってるの?」
「げほっ!」心春は思わず咳き込んだ。田中家の情報網はなかなか優秀なようだ。「あの、この人は卿介、村上悠臣よ。私たち子供の頃からの知り合いで、二年間一緒に住んでいたこともあるの。最近偶然再会したばかりで、あなたが考えているような関係じゃないわ」