すると、皆の視線が、声のした方向へと向けられた。
松田文翔は、反射板を持っている温井卿介を目を丸くして見つめ、この親友が一体何をしているのか理解できなかった。
今日、彼は顧客と食事をしていて、個室の窓から外を眺めていた時、湖と山の景色の中で、ウェディングフォトを撮影している人々を見かけた。
もちろん、それは重要なことではない。重要なのは、卿介が反射板を持って、ウェディングフォトを撮影している新郎新婦の傍らに立ち、カメラマンの指示に従って動いていたことだ。
まるで...カメラマンのアシスタントがやるような仕事だった。
「あなたは誰ですか?」撮影中の山本綾音は、この声で作業を中断され、松田文翔の方を向いた。
「私は...」
「私の友人です!」温井卿介が前に出て言った。
「ああ、村上悠臣さんのお友達なんですね」山本綾音が言った。「はじめまして」
「村上悠臣?」松田文翔は驚いた。彼は温井卿介と長年の付き合いで、村上悠臣が温井卿介の改名前の名前だということを知っていた。
この名前は、卿介が改名してから一度も使っていなかったはずだ!
「卿介さんのお友達なんですね。私は仁藤心春です」仁藤心春も前に出て、松田文翔に微笑みながら言った。
彼女は初めて卿介の友人に会った。
「はじめまして」松田文翔は急いで返事をした。「私は松田文翔です...『村上悠臣』の友人です」
状況が分からない中でも、松田文翔は少なくとも「温井卿介」という名前を直接口にすることは避けた。
「私は山本綾音です。心春の友人で、今日は心春と村上さんに手伝ってもらっています」山本綾音が言った。
手伝い?松田文翔は思わず口角を引きつらせた。卿介は決して人の手伝いなどしたがらない人のはずなのに!
「どうしてここにいるの?」温井卿介は松田文翔に尋ねた。
松田文翔は眉を上げた。それは自分が聞くべき質問だろう。温井家の次男が、ここで人の手伝いをしているなんて、一体どういうことなのか?
もし彼らの社交界の人々が、卿介が反射板を持って撮影の手伝いをしているのを知ったら、きっと皆が驚いて口を開けっぱなしになるだろう。
「ここで仕事の打ち合わせがあって、ちょうど終わったところで、君を見かけたんだ!」松田文翔が言った。
「じゃあ、もう帰れるね」温井卿介は冷たく言った。