温井卿介がその日帰った後、もう病院には留まらなかったが、山本綾音が病院に来て、親友の付き添いをしていた。
実は、その日山本綾音は仁藤心春に電話をかけた後すぐに病院に駆けつけたのだが、温井卿介に阻まれて病室に入ることができなかった。
温井卿介が去った後になってようやく、山本綾音は中に入ることができた。
「心春、大丈夫...?」山本綾音は親友の腫れた目を見て、これほど目が腫れているということは、きっと相当な涙を流したのだろうと心の中で嘆いた。
以前、心春は山田流真と別れた時でさえこんなことはなかったのに、今は温井卿介のために...
「大丈夫よ」仁藤心春は少しかすれた声で答えた。
昨夜の号泣で、彼女は心の中のすべての苦しみ、悔しさ、悲しみを全て流し出した。
そして、卿介への全ての感情を、心の奥深くにしっかりと埋めた。