第105章 腹黒い温井朝岚

「あの、朝岚さんにお会いしたいのですが」と山本綾音は受付に向かって言った。

彼女は以前朝岚に電話をかけており、ここに来るように言われたので、このように言えば問題ないはずだった。

受付の職員はそれを聞いて、すぐに「山本綾音さんですか?」と尋ねた。

「はい」と綾音は答えた。

「こちらへどうぞ。温井理事長がお待ちです」

受付の職員の一人が綾音をエレベーターまで案内し、二人で一緒に乗り込んだ。

エレベーターの中で、綾音は相手が自分を密かに観察しているのを感じ取った。明らかに彼女に対して好奇心を抱いているようだったが、綾音は微笑むだけで、気付かないふりをした。

エレベーターが目的の階に到着し、職員が綾音を連れて出ると、背の高い美しい女性が近づいてきた。

「藤原秘書!」と受付の職員は言った。「こちらが山本さんです。温井理事長から、来られたら直接お通しするようにと言われています」