第84章 車を売る

この車も、今となっては何の意味もないわ!

週末、山本綾音は仁藤心春と一緒に中古車販売店に来ていた。

「本当にこの車を売るの?」山本綾音が尋ねた。

「そうよ、置いておいても価値が下がるだけだもの」仁藤心春は淡々と笑いながら答えた。

山本綾音は知っていた。この車は以前、心春が温井卿介に買い与えたものだった。

当時、親友が50万元も使って相手に車を買ってあげたと知った時は驚いた。結局、心春自身が乗っているのは20万元程度の車だったのだから。

でも、その時の心春は笑いながら「卿介が気に入ってくれればいいの」と言っただけだった。

まるで卿介が好きなものなら、何でも与えようとしているかのように!

でも誰が想像できただろう、卿介が温井卿介だったなんて。

「彼と別れて、本当に...未練はないの?」山本綾音は思わず聞いてしまった。