その笑顔に、山本綾音の心臓は思わず早鐘を打ち始めた。
なんてこと!もし彼がもっと不細工だったら、こんなにドキドキしなかったのに!
「あの...私のスタジオについて、何を知りたいの?」綾音は話題を振った。仕事の話をすれば、こんな恋する乙女みたいなドキドキも収まるはず!
「君にポートレートを撮ってもらうことになったから、これまでの作品を見せてほしい」と温井朝岚が言った。
「もちろん大丈夫です」綾音は急いで返事をし、これまでの作品集を取り出して、朝岚の前に並べた。
朝岚はそれらのアルバムをめくっていった。風景写真もあれば、人物写真もあった。
ただ、意外だったのは、彼女が撮影した人物写真には、モデルやタレントの他に、多くの一般の人々も写っていたことだ。
路上の行商人、手を繋いで歩く母と娘、路地裏で編み物をする老婆...これらの写真には、生活の息吹が満ちていた。