温井朝岚の瞳孔が急に縮んだ。「綾音?」
「私はあなたと一緒にいたくありません!」山本綾音は心を鬼にして言った!
「なぜだ?」彼は諦めきれない眼差しで彼女を見つめた。「君も僕のことが好きなはずだ。なぜ一緒にいたくないんだ?まさか...」
彼は言葉を詰まらせ、左脚の横に垂れた手が思わず左脚のズボンを握りしめた。珍しく自信なさげな声で、「まさか、君も僕の足が不自由なことを嫌っているのか?この障害のせいで、僕と一緒にいたくないのか?」
山本綾音は一瞬固まった。彼の足...実は彼女は一度も嫌悪したことはなかった。むしろ、彼の足が不自由なことで、より一層の憐れみと心痛を感じていた。
でも...今この瞬間、本当にこの感情を断ち切りたいのなら―
「そうよ、私はあなたの足が嫌なの!」山本綾音は言った。「私のパートナーには健康な体の人がいい。障害者じゃなくて。将来、彼氏と一緒に歩いているときに、人々の変な目で見られたくないの!」
彼女は一気にその言葉を吐き出した。
空気は再び静寂に包まれ、周囲は低気圧に支配されているかのようだった。
山本綾音は顔をそむけ、温井朝岚の表情を見る勇気が出なかった。
どれくらいの時が過ぎたのか、温井朝岚の声がようやく再び響いた。「そうか、君もこの足を嫌っているんだな。もし僕が健康で、障害がなかったら、僕と一緒にいてくれたのか?」
「今さらそんなことを言っても意味がないでしょう。とにかく、私たちの関係は、クライアントとカメラマンの関係だけにしたいの。もう遅いから、帰るわ!」
山本綾音はそう言って、急いで立ち去った。最後まで温井朝岚の顔を見ることはなかった。
一度でも温井朝岚の表情を見てしまえば、後悔して、先ほど言った言葉を撤回してしまいそうだったから!
山本綾音が去った後も、温井朝岚はその場に立ち尽くしていた。
体の横に垂れた手で、自分の左足を強く握りしめていた!
これまで...自分の障害をこれほど嫌悪したことはなかった。
あの時、病院で目覚めて、医師から足が不自由になり、治る見込みがないと告げられた時でさえ、ただ落胆しただけで、苦しみはなかった。
彼にとって、それは歩行に影響が出るだけのことだった。少なくとも、生きていられたのだから!
生きていることより大切なものなんてない!