第188章 彼はやはり優しいままだった

「ごめんなさい」山本綾音は呟いた。

以前は、温井澄蓮に脅されても謝ることを拒んでいた。一度謝ってしまえば、温井朝岚との縺れがより断ち切れなくなることを恐れていたからだ。

しかし今、こんなに優しい彼の前で、この「ごめんなさい」という言葉は、思わず口から零れ出てしまった。

「私は言ったはずだ。君は謝る必要はない。君には何の過ちもない。私が不十分で、君に好かれるような人間になれなかっただけだ」と温井朝岚は言った。

「違います!」山本綾音は言った。「違う...あなたが不十分なんかじゃない」

そう言いながら、何か思い出したかのように、彼が誤解するのを恐れて付け加えた。「私があなたを断ったのは、ただ単に私のあなたへの感情が、恋愛や一生を共にしたいと思うような感情ではないからです」