仁藤心春は昼休みの時、山本綾音に電話をかけ、友人の見合いの状況について尋ねた。
昨日の見合いの食事が、最後にあのような結果になってしまったので。
「心配しないで、向こうは両親に私とは相性が合わないと言ったから、この見合いはここで終わりよ」と山本綾音は言った。
「じゃあ、あなたの両親は温井朝岚のことを知らないの?」と仁藤心春は尋ねた。
「うん、知らないわ。知らせるつもりもないの」と山本綾音は言った。彼女は自分なりの方法で、両親を傷つけないように守りたかった。
かつて叔母が恋愛をしていた時、おじいちゃんは毎日ため息をつき、おばあちゃんはよく泣いていた。彼女は幼かったが、その記憶は残っている。
彼女は自分の両親に、かつてのおじいちゃんとおばあちゃんの二の舞を踏ませたくなかった。