山本お母さんは途方に暮れて娘の手をしっかりと握り、涙を流し続けていた。「どうしてこんなことに……どうしてこんなことに……」
綾音は自分を奮い立たせた。今、家族の中でお母さんが頼れる人は自分だけなのだから。
お父さんさえ生きていてくれれば、その後の賠償問題は自分が解決する。たとえスタジオを売り払っても、家を失っても、人さえ無事なら、他のことはすべてやり直せる!
こうして、綾音とお母さんは手術室の外で待ち続けた。山本お父さんの手術が最初に終わり、医師が出てきて、お父さんの火傷は体の20%に及び、濃い煙を吸い込んだため気道に損傷があったが、適時に気管切開手術を行ったため今は大丈夫だと告げた。ただし、肺に実質的な損傷があり、今後は持病として残るだろうとのことだった。
しかし、どうあれ命は助かった!
ICU病棟で24時間の危険期を過ごす必要があるものの、通常は大きな問題はないとのことだった。
山本お母さんはその言葉を聞いて、ほとんど崩れ落ちそうになった。
「命が助かってよかった、助かってよかった……」お母さんは繰り返し言った。
看護師が意識のない山本お父さんをICU病棟に運んでいった。
綾音とお母さんも一緒について行ったが、病室の入り口で二人は外に止められ、床まである窓ガラス越しに、中で病床に運ばれる父親を見守ることしかできなかった。
「どうしてうちの家族がこんな目に遭うのかしら。前から言っていたのに、工場で安全管理者なんかにならないでって。危ないって。でも聞かなかったんだから。こうなってしまった。あの人ったら、いつも強がって……目が覚めたら、どうやって向き合えばいいのかしら……」お母さんは涙を流しながら言った。
綾音には分かっていた。父親のこの状態では、今後仕事ができなくなるだけでなく、多額の医療費が必要になる。そして健康だった人が火傷の患者となり、長期の治療が必要になる。精神的にも多くの変化があり、家族にとっても試練となるだろう!
「お母さん、私たちはお父さんと一緒に乗り越えましょう。お父さんはきっと良くなります!お母さんがいつも言っていたでしょう?家族が一緒にいれば、何も怖くないって」綾音は言った。
お母さんは呟きながら頷いた。「そうね、家族が一緒にいれば……一緒にいれば……」