その言葉が出た瞬間、全員の視線が看護師に向けられ、温井澄蓮は特に信じられない表情を浮かべていた。
元々山本綾音を阻んでいたボディーガードが一歩後ろに下がり、山本綾音は素早く診察室に入った。温井澄蓮は不機嫌そうに後を追おうとしたが、仁藤心春が素早く彼女を遮った。
「お兄様は綾音だけに会いたいんです」と仁藤心春は言った。
「何よ、自分の兄に会うのにあなたの許可が必要だっていうの?」温井澄蓮は仁藤心春を睨みつけた。
「妹よ、ここで待っていた方がいいんじゃないかな」温井卿介が仁藤心春の側に来て、「兄上が山本綾音に会いたいというなら、まずは二人に話をさせてあげよう。私だって今、この病室の外で待っているじゃないか。兄上と山本綾音の話が終わってから会えばいい」
「……」温井澄蓮は言葉に詰まった。