第230章 彼に会いたい

その言葉を聞いた温井澄蓮は、すぐに冷笑して言った。「よく大兄のケガの理由を聞けますね?あなたの家の面倒事がなければ、大兄が怪我をするはずがないでしょう。あなたたちのような人には関わらないようにと言ったのに、大兄は頑固に関わろうとして、今や森山乃月とかいう女が大兄を刺すなんて、まさに恩を仇で返すようなものです!」

山本綾音は驚いた。森山乃月が温井朝岚を刺した?!

「森山乃月はあの時、大兄を刺しながら、全て山本綾音のせいだと言い続けていました。だから彼女はこんなことをしたんです!山本綾音、あなたとあの女性の間に何があったのかは知りませんが、どうか大兄を巻き込まないでください。なぜあなたが人を傷つけた報いを、大兄が受けなければならないのですか!ただあなたのことが好きだからですか?」

この非難に、山本綾音は混乱した。

彼女は森山乃月に何も害を与えていない。最近の衝突と言えば、病院の入院棟のロビーで口論になっただけで、その後、森山乃月は警備員に連れて行かれ、それ以来気にも留めていなかった!

しかし今、彼女にとって最も重要なのは——「朝岚さんは今どこにいるの?怪我の具合はどう?」彼女は心配そうに尋ねた。

「なぜあなたに教える必要があるのですか」温井澄蓮は無愛想に言った。「私が電話したのは、ただあなたに警告するためです。これからは大兄から離れていてください。もう大兄を傷つけないでください!」

そう言うと、温井澄蓮はすぐに電話を切った!

山本綾音は焦りながら自分の携帯電話を取り出し、温井朝岚の番号をダイヤルした。

この番号を、ここ数日よく見ていた。かけようかどうか迷っていたが、まさかこんな状況でこの番号をダイヤルすることになるとは思わなかった。

しかし、かけてみると、相手の電話は電源が切れているというメッセージが流れた。

山本綾音は失望の表情を浮かべた。もしこの電話も通じないのなら、どうやって彼を見つければいいのだろう!

「卿介に連絡してみましょう」仁藤心春が言った。

そうだ、温井卿介がいる!山本綾音の目が輝いた。朝岚さんが事故に遭ったのなら、温井家の人間である温井卿介は、きっと朝岚さんの居場所を知っているはずだ。

すぐに仁藤心春は電話をかけた。

「お姉さん」温井卿介の声が携帯から聞こえてきた。