第265章 たとえ欲張りでも、私は好き

山本綾音は一瞬呆然としました。自分が何気なく例えを出しただけなのに、温井朝岚がこれほど大きな反応を示すとは思いもよりませんでした。

「ごめんなさい、もう二度とこんな軽率な例え話はしません」と山本綾音は言いました。この男性は、彼女をどれほど愛しているのでしょうか?

そして彼女は、本当にこの愛に応えることができるのでしょうか?この瞬間、彼女の心は迷いで満ちていました。

「綾音、さっきの…私が間違っていた」温井朝岚の声が低く響きました。

「何が?」

「見返りを求めていないと言ったのは、おそらく無意識の嘘だった。実は…見返りが欲しい。その見返りとは、君の愛だ。君が私から離れられないほど、私のことを愛してくれるほど、私は君に尽くしたい」と温井朝岚は囁くように言いました。

少し間を置いて、彼は顔を上げ、山本綾音を見つめました。「私が欲張りすぎだと思う?」

欲張り?山本綾音は目の前の男性を呆然と見つめました。彼女を見る彼の眼差しには、慎重さと、渇望と、不安が混ざっていました…

「欲張りでも、私は好きです!」山本綾音は呟くように言いました。「温井朝岚、あなたの欲張りな部分が好きです。だからあなたが求める見返り、私がちゃんと返します。私はあなたをとても愛します」

彼の綾音は…彼女があまりにも素晴らしいから、彼はますます欲張りになり、ますます深く溺れていくのです。

「そうだ、まだ何を手伝って欲しいのか聞いていなかったね」と温井朝岚は言いました。

山本綾音はようやく本題を思い出しました。「そうなんです。坂下倩乃のことを調べて欲しいんです。今日、心春が匂い袋をトイレに捨てたと誣告した女性のことです。あの匂い袋は、彼女自身が捨てて流したのに、それは秋山瑛真に贈った匂い袋だと言い、自分の物を捨てるはずがないと言いました。あまりにも矛盾していて、何か変だと思うんです」

「何を調べればいい?匂い袋を彼女が捨てた証拠?」と温井朝岚は尋ねました。

「違います」山本綾音は首を振りました。誰が匂い袋を捨てたかは、もう重要ではありません。どうせ温井卿介が心春の面目を取り戻してくれたのですから。「坂下倩乃が一体どうやって秋山瑛真の恩人になったのか、彼女は秋山瑛真に対してどんな恩があって、秋山瑛真がこれほど彼女に報いているのか、それを調べて欲しいんです」