仁藤心春と山本綾音が振り返ると、話しかけてきたのは元クラス委員長の村瀬向陽だった。
村瀬向陽の隣には、当時のクラスメイトが何人かいて、その中には山田流真、島田書雅、坂下倩乃もいた。
「さっきまで、二人が今日の学校記念日に来るかどうか話してたんだ。倩乃は絶対来ないって言ってたけどね」と村瀬向陽が言った。
坂下倩乃は声を張り上げた。「知るわけないでしょ。今日、厚かましい人が来るなんて。だって、ある人のせいで、流真と書雅は2年前に結婚できたはずなのに、こんな回り道することになったんだから」
「何を言ってるの!」山本綾音は坂下倩乃を睨みつけた。「2年前って、その頃山田流真の会社はまだ赤字だったでしょ。島田書雅が振り向くわけないじゃない。だって彼女、相手にお金ができてから結婚する人でしょ!」
山本綾音にそう言われ、山田流真は顔色を変え、島田書雅は委屈そうな表情を浮かべた。「綾音、どうしてそんなこと言うの」
「なに、私が間違ったこと言った?あなた、流真と心春が付き合ってる時に第三者になったんでしょ?あなたたちの素敵な動画、トレンド入りしてたわよ。クラスメイトの多くも見たんじゃない?」山本綾音は容赦なく言い放った。
彼女はこの不倫カップルが前からムカついていた。今、自分から罵倒されに来たんだから、罵倒してやる!
島田書雅の顔は一気に真っ赤になり、目に涙が浮かび、今にも溢れ出しそうだった。
山田流真も怒りを露わにして言った。「山本綾音、そんなこと言うなんて!」
「あなたたちがやれることを、私が言えないわけない」山本綾音は強気に言い返した。「それに今、結婚できるのも、心春の特許権を使えたからでしょ?そうじゃなかったら会社は破産寸前だったのに、よく結婚式の招待状を配れるわね」
山田流真は顔を曇らせたが、山本綾音の言葉に反論できなかった。
坂下倩乃は声を張り上げた。「仁藤心春の特許権はGGKに与えたもので、山田流真に与えたわけじゃないわ。流真はGGKから使用権を得ただけよ。心春が与えたみたいに言わないで。できるなら、GGKに与えなければいいじゃない!」
島田書雅もすぐに坂下倩乃に同調した。「そう言えば、倩乃の助けのおかげよ。倩乃は今や秋山会長の恩人なのよ。倩乃が一言言えば、ある人の特許権だって簡単に手に入るわ」