第256章 動揺と気付き

木村教授は匂い袋を見つめ、微笑みながら受け取りましたが、匂い袋の香りを嗅いだ時、少し驚いた様子で「この香りはとても特別だけど、どこか懐かしい感じがするね。以前嗅いだことがあるような気がする」と言いました。

「大学時代に、教授のご指導の下で開発したものです。当時の配合で作り直してみました。気に入っていただければ幸いです」と仁藤心春は答えました。

「この贈り物、とても気に入ったよ」と木村教授は笑顔で言いました。

アロマサークルの他のメンバーたちは、口々に仁藤心春にアロマについての質問を投げかけ、心春はそれぞれに丁寧に答えていきました。

その間、心春は一緒に来た山本綾音が退屈しているのではないかと心配しましたが、綾音は全く退屈している様子はなく、むしろアロマサークルの様々な小物を興味津々で見学し、後には学園祭で販売されているアロマキャンドルやアロマオイルなどを大量に購入しました。後輩たちを応援するためだと言って。

昼食時になり、アロマサークルのメンバーたちは近くのレストランで一緒に食事をしようと提案しました。

「いいですね、私が御馳走させていただきます」と心春が言いました。

「そんな、申し訳ありません!割り勘にしましょう」とアロマサークルのメンバーたちが言いました。

「私に御馳走させてください。せっかく今日はこんなに楽しい時間を過ごせているので、皆さんと木村教授にお食事を御馳走したいんです」と心春は言いました。

木村教授は微笑んで「今日は心春から素敵な贈り物をもらったんだから、この食事は私のような年寄りに奢らせてくれないか」と言いました。

心春が何か言おうとすると、木村教授は彼女の肩を叩いて「先生に奢らせてくれ。私の指導のおかげでアロマの分野で成功を収めてくれて、教師として本当に誇りに思う。この食事も、先生からの贈り物だよ」と言いました。

心春は目に涙を浮かべました。死ぬ前に、かつての敬愛する恩師に再会でき、もう一度一緒に食事ができるなんて、本当に良かったと思いました。

一行は学校近くのレストランに着き、大きな円卓を予約しましたが、心春が予想もしなかったことに、隣のテーブルには山田流真と島田書雅たちのグループがいました。

彼らもこのレストランで食事をすることにしたようでした。