第263章 2人の男性の異なる感情表現

温井卿介は人目も気にせずに仁藤心春を抱きしめ、深い愛着を示すかのようだった。

その二人の女子学生は、その様子を見て怒りと恥ずかしさで顔を赤くし、「気が狂ってる、この人完全に狂ってるわ!何なのよ、LINEを教えたくないなら、こんな風に人を侮辱することないでしょ!」と憤慨した。

「そうよ、この女のために六親を切って、生きていけないとでも言うの?」

温井卿介は顔を少し上げ、冷たい視線を二人の女子学生に向けた。

途端に二人は口を閉ざし、背筋に寒気を感じて慌てて立ち去った。

温井卿介はようやく再び仁藤心春の肩に顔を埋めた。

傍らで見ていた山本綾音は、心の中で感慨深く思った。このような温井卿介は、先ほどレストランで圧倒的な強さで喧嘩をしていた彼とは、まるで別人のようだった。

心春が温井卿介の側にいたいと思うのも無理はない。知らない人が見たら、きっと熱愛中のカップルだと思うだろう。