彼らが個室から出てくるのを見ると、支配人はすぐに前に出て、「あの小宮教授、先ほどのテーブルの...えっと、お客様が何か落とされたようで、そのテーブルには貴校の先生方がいらっしゃいましたよね?連絡先をご存知ではありませんか?こちらから確認の電話をさせていただきたいのですが」
大学の近くにある店だったため、支配人も慶応大学の先生方を何人か知っていた。
秋山瑛真の後ろにいた小宮教授はこの話を聞いて、先ほどの木村教授のテーブルのことだと気づいた。
小宮教授は慎重に秋山瑛真の様子を窺い、瑛真が何も言わないのを確認してから支配人に、「では、先ほどの方は木村教授ですので、私から声をかけて、誰か落とし物がないか確認してもらいます。もし落とした人がいれば、取りに来てもらうようにします」と言った。