第281章 もう何も期待しない

「はい」と温井朝岚は言った。

山本綾音は少し居心地が悪くなった。「あなたに言わないけど、気にしない?」

「友達の秘密を守るのに、なぜ気にするの?」と温井朝岚は優しく言った。

「そうね、ますますあなたって本当に素敵な人だと思うわ」と山本綾音はつぶやいた。

温井朝岚の目に光が走った。素敵だって?もし彼女が父親の事故と自分に関係があることを知ったら、まだ自分のことを素敵だと思うだろうか?

でも、彼は彼女に知らせるつもりはない。永遠に!

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一方、秋山瑛真が坂下倩乃を彼女のアパートまで送った時、車から降りようとする坂下倩乃に突然尋ねた。「結局、仁藤心春から何を盗んだんだ?」

坂下倩乃の体が急に震え、やっと戻りかけていた血色が再び失せた。

「私...私は既に言ったでしょう...宿題...宿題よ...」と坂下倩乃は呟いた。