第280章 物を盗んだことを認める

次の瞬間、山本綾音が突然叫んだ。「心春、危ない!」

仁藤心春が反応する間もなく、強い力で押しのけられ、よろめきながら横に倒れていった。そして、ちょうど食器を片付けようとしていたウェイターにぶつかってしまった。

瞬時に、食器が床に落ちて割れた。

食べ残しが仁藤心春の服にかかってしまった。

散々な姿になってしまった!

「心春!」山本綾音が叫び、急いで親友の元へ駆け寄り、状態を確認した。

仁藤心春はようやく我に返り、山本綾音に向かってつぶやいた。「大丈夫よ」

山本綾音は何かを言い続けていたが、仁藤心春にはよく聞こえなかった。

さっき彼女を押しのけたのは瑛真だった。

体の痛みが、彼が彼女を押した力の強さを物語っていた。

彼女はゆっくりと顔を上げ、秋山瑛真が坂下倩乃に向かって心配そうに尋ねている姿を目にした。「大丈夫か?」