第285章 子供を探す

週末、仁藤心春は匂い袋を木村教授に返しに行くことになっていた。前もって木村教授に電話をかけ、住所も聞いていた。

ただ、彼女が出かけようとした時、温井卿介も一緒に行きたいと言い出した。

「あなたも行くの?」心春は驚いた。

「どうせ家にいても特にすることないし、お姉さんと一緒に行こうと思って」温井卿介は言った。

心春は相手をじっと見つめ、どうせ木村教授のところでは匂い袋を渡すだけだと思い、承諾した。

車で木村教授の住まいに着くと、古い団地だったが、環境は悪くなかった。

住所通りに二人が木村教授の家の前に来ると、心春はインターホンを押したが、誰も出てこなかった。

心春は不思議に思い、木村教授の携帯に電話をかけた。すぐに木村教授の声が聞こえてきた。「あ...心春さんですか」