第286章 また鼻血が出る

また鼻血が出てしまったのね!

仁藤心春は真っ赤な血液が子供の服に滴り落ちるのを見つめていた。

子供も心春の鼻血に驚いたのか、泣くのを忘れてしまったようだった。

「お姉さんは大丈夫だから、怖がらないで。お姉さんが綱を結んであげるから、そうしたらゆっくり引き上げてもらえるわ。いい子だから、目を閉じていてね」心春は言いながら、めまいの感覚を必死に抑えようとしていた。

幸い、子供は言うことを聞いて目を閉じた。心春は丁寧に綱を子供の体に結び付けた。

鼻血は...まだ止まらない。頭を下にしている関係で、いつもより早く流れ出ていた。

でも、それは重要ではない。今は早くこの子を穴から出すことが一番大事だ。

綱を結び終えると、心春は肩に付けたトランシーバーに向かって言った。「準備できました。引き上げてください!」

すると彼女と子供の体がゆっくりと引っ張られ始めた。子供は驚いたように目を開け、その丸い黒い瞳で彼女を見つめた。

「怖がらないで、一緒に上がっていくからね」心春は片手で男の子の手を握り続け、もう片方の手で自分の鼻を押さえた。あまりの出血量に子供が怖がらないようにするためだった。

綱はゆっくりと、少しずつ二人を引き上げていった。

時間が異常に長く感じられた。

おそらく鼻血のせいで、めまいの感覚がどんどん強くなっていった。

二人がようやく地上に戻ったとき、心春は足が地面に触れるや否や、よろめいて転びそうになった。

温井卿介が素早く心春を抱き留め、傍らで誰かが驚いた声を上げた。「彼女...血を流してる、すごい量!」

すぐに、全員の視線が心春に集中した。子供の状態を心配そうに確認していた木村教授と家族までもが、心春の方を見ていた。

「私...大丈夫です、ただの鼻血ですから」心春は顔を上に向け、これ以上鼻血が出ないようにした。

しかし彼女の手も服も、かなりの血で汚れていた。

救出された男の子の服にも、血が付着していた。

「どうしてこんなに血が出るんだ?」温井卿介は眉をひそめ、目に心配の色を浮かべた。これは彼女が鼻血を出すのは初めてではなかった。

「たぶん最近、火が強すぎるだけよ。すぐに良くなるわ」心春は答えた。

すぐに誰かが綿を持ってきて、心春の鼻血を止めようとした。